あと30日で、他人に戻るふたり

6日目 うまいからいいか

インターホンの音で、目が覚めた。

夢か現実か分からず、気のせいかもしれないと思っていったん瞼を閉じる。
それでも、なんとなく引っかかって寝返りを打った。

十数秒後、またインターホンが鳴る。


……さすがに気のせいじゃない。


急いで起き上がってベッドから降りて、寝室のドアを開けた。

ちょうどソファからむくりと彼も起き上がったところだった。
彼は一度こちらを見たものの、すぐにインターホンのモニターをつけた。

「……はい」

『おはようございますー!宅配ですー!藍沢さんのお宅で合ってますかー?』

「……はい」

『お荷物のお届けでーす!』

「……はい」


彼はピッとオートロックを解除し、玄関へ向かおうとして足を止める。

「あ、おはよう」

「おはようございます」


昨日、一言も交わさなかった言葉。

急にまたいつもみたいに動き出した感じがして、不思議な心地がした。

「なにか頼んだんですか?」

「うん、ちょっと」

彼はそう言いながら、リビングを出ていった。


……どうでもいいけど、あの寝ぐせマックスの状態で配達員さんを出迎える勇気がすごい。
台風にでも長時間煽られたのかと思うような、毎朝面白い寝ぐせ。


私は廊下から洗面所に移動し、顔を洗う。

そうしているうちに、荷物を抱えてさーっとリビングへ戻っていく彼の姿がちらっと見えた。

────なんか、やけに細長いダンボールを持っていたような。


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