彼と彼女の、最大の不具合
そんな私の混乱なんてお構いなしに、右京くんはまた耳元へ顔を寄せて、低い声で静かに呟く。
「俺以外の人の前で、無防備な顔見せたらだめ」
その一言が落ちた瞬間、息が止まりそうになる。
「……っ、」
どういうこと、なんでそんなこと言うの、と頭の中が一気に騒がしくなる。
「(それって、すごく……嫉妬してるように聞こえるんですが…)」
心の中でそう呟くしかできないまま、言葉は喉の奥に引っかかって出てこない。
右京くんは私の肩に手を置いたまま、ゆっくりと体を離していくのに、それでも距離はほとんど変わらなくて、むしろ視線の圧だけが強くなるみたいだった。
目の前にいる右京くんは、私の顔を覗き込むようにして真っ直ぐ見つめてきて、その熱を帯びた視線に、全部吸い込まれてしまいそうになる。
「…ど、うしたの、右京くん。いつもと違うよ…もしかして酔ってる?」
ようやく絞り出した言葉も、どこか頼りなく震えてしまう。でもその問いに対して、右京くんは少しも表情を崩さずに、「違う?俺はいつも、こうだけど?」と淡々と返してきて、私は思わず目を逸らしてしまう。
「(だめ…この目に見つめられたら今度こそ死んじゃうっ!)」
悲鳴を上げながらも、頭の中ではかっこいい、好き、無理、かっこいい、好き、という言葉がエンドレスで跳ね回っている。
そんな私の様子を見ているのかいないのか、右京くんはふいにぽつりと呟いた。
「香坂の後輩なの、ずるい」
その言葉の意味がすぐには理解できなくて、一瞬だけ時間が止まったように感じる。
「俺にも、香坂の何かがほしい」
「…っ、」
心臓が変な音を立てる。