彼と彼女の、最大の不具合
「…わ、私の」
「…うん」
「(……私の全部あげますけどーーー!?)」
いやむしろ余裕で全部差し出せるのですが!というか最初から全部差し出すつもりでここにいるのですが!
理性が勝手に白旗を振り始める。
そもそも部屋に誘ったのも私だし、下心がゼロだったかと言われたらそんなわけもなくて、いつもどこかで右京くんに押し倒されたいとか、逆に押し倒したいとか、そんな危険な妄想をしていたのも事実で、それなのに今この距離でそんな顔をされて、どうして理性が保てると思ったのか自分でも分からないくらいですが?
「(ちょっとそれは私のこと舐めすぎじゃないか?)」
右京くんは一体私の何がほしいの?もしかして本当に、私のことが好きだったりするのだろうか、いやそんなはずない…でも、でも……!!
心の中で謎の逆ギレをしながらも、結局は何も言えないまま、ただ目の前の右京くんを見つめ返してしまう。
「…な、なにが欲しいの?」
赤くなっているのが自分でも分かる顔のまま、右京くんの方をちらっと横目で見ながら尋ねる。肩に置かれた手の重みだけで、心臓が変な音を立てる。
「(だって、だって…肩組んだりするのは普通にあるけど!こんな距離で、こんな空気は初めてなんだもんっ!)」
必死に言い訳を並べていると、右京くんはその手をすっと離して、一瞬だけ視線を宙に泳がせるように考え込んだあと、ぽつりと口を開いた。
「名前」
「…名前?」
思わず聞き返すと、右京くんは真っ直ぐこちらを見て、
「香坂の名前を呼べる権利が欲しい」
と何の迷いもなく言う。
「…っ、そ」
「そ?」
「(そんなのでいいのーー!?)」
期待してしまった自分が一番恥ずかしい!もっとこう、えっと、そういう方向のやつとか、体とか!(ハレンチ!)彼女になってほしいとか、いやそれは完全に私の暴走した妄想だけど!