彼と彼女の、最大の不具合

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3日間の出張が終わった、翌日。
たったそれだけの期間だったのに、やけに長く感じた。

香坂とは、あれから一言も話していない。話しかけようと思う瞬間は何度もあったのに、そのたびに、なんとなく避けられている気がするという感覚が先に立って、結局声をかけられないままだった。

パソコンでデータを確認していると、白衣を着た霧島が近くに立っているのが見えた。そういえば、何か確認したいことがあるとか社内メールがきてた気がする。


「なあ、天音なんかあったのか?」


不意に投げられた言葉に、指が止まる。


「何の話?」

「いや、ここ空気悪くね?香坂さんも元気なさそうだし」


霧島はラボ全体を見渡しながら、やけに率直なことを言う。


「出張の疲れ溜まってるだけ」


できるだけ素っ気なく返す。けれど霧島は納得していない顔をしていた。


「ふーん……それにしてはさ」


言いかけて、霧島はちらりと香坂の方を見る。香坂はいつも通り実験台の前に立っているのに、どこか集中しきれていないようにも見える。手は動いているのに、視線だけが少しだけ遅れている。


「いや、別にいいけどさ。お前らなんか変だよ」


俺は視線をパソコンに戻すふりをしながら、無意識にキーボードを叩く手を止めていた。


「(……相談するような話でもないだろ)」


そう思うのに、頭の中には出張最終日の光景が勝手に浮かんでくる。唇に触れた一瞬と、そのあと何もなかったように戻っていった空気。そして今の香坂の距離。


「(……俺のせいだろ、普通に)」


こんな場所で霧島に相談する話でもない。そもそも相談できるような形にもなっていない。ただ一つだけ分かるのは、あの3日間のせいで、もう元通りには戻れないということだけだった。


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