彼と彼女の、最大の不具合
「(……選べる、か)」
頭の中でその言葉だけが繰り返される。ここで何もせずに終わらせるのも選択肢だし、謝って、向き合って、どうにかしようとするのも選択肢だ。でも、その先にある結果は、どっちも怖い。今のままなら、まだ完全に終わったわけじゃないって言い訳ができる。距離はできてるけど、関係が壊れたと確定したわけじゃない。だからこそ、余計に踏み出せない。
「伝えろよ、ちゃんと。言葉で」
「……。」
「天音が、香坂さんのことを好きなのは本当だろ。その気持ちすら勘違いされたままでいいのかよ」
その言葉に、何も返せなかった。
分かってる、そんなことは最初から。あの時だって、本当はちゃんと伝えるつもりだった。ただの衝動で終わらせるつもりなんてなかったし、むしろ逆で、あの瞬間に全部言葉にするつもりだったのに、結果として残ったのはキスだけで、肝心の気持ちは一つも届いていない。
自分で自分に呆れるしかない。
好きだって言わずに触れて、相手を困らせて、挙句の果てに何も言えないまま距離だけできてるとか。
でも、キスしたあとに好きだったからなんて言ったところで、都合よく正当化してるだけにしか見えない気がする。むしろ、余計に引かれるんじゃないかって考えてしまう。
…出会ったときから、ずっと好きだった。
最初はただの仕事相手で、むしろやりづらいと思っていたはずなのに、気づけば視線を追うようになっていて、いつの間にか当たり前に隣にいる存在になっていた。
仕事に手を抜かない香坂と一緒にいい商品を作る時間が、純粋に楽しかった。