彼と彼女の、最大の不具合
居酒屋を出て、酔っ払いの結衣の肩を抱きながら駅へと向かう。
私も私でかなりアルコールを摂取してしまった。あれから結衣の右京くんに対する悪口が止まらなさすぎて、そのたびに「右京くんは素敵なんだからそんなこと言うのヤメロ!」なんて言い合いになっていた。
「茉白、今から右京を殴りに行くぞ!」
「いかないから!あの綺麗な顔がぼこぼこになったらどうするの!」
自分でも何を言っているのか分からないくらいのテンションで返してしまう。しかも気づいたら、結衣は右京くんを呼び捨てにしていて、その事実に後からじわじわくる。
「(……呼び捨て……)」
ふと、右京くんに「茉白」と呼ばれたときのことを思い出してしまって、ボッと一気に顔が熱くなる。
「ギャー!」
「なんだ!?右京を見つけたか!?」
勢いよく肩を揺さぶられて、現実に引き戻される。
「そうじゃないから!」
慌てて否定するけど、もう時すでに遅し。
「なにその顔!絶対なんか思い出してるでしょ!」
「違うってば!」
と言いながらも、さっきの“茉白”という響きが頭の中で勝手に反響してしまって、余計に落ち着かない。
周りから見れば、完全にただの酔っ払い二人組だろう。ふらふらしながら、変なタイミングで笑ったり叫んだりしている私たちは、きっとかなり危ない人たちに見えている。