彼と彼女の、最大の不具合
「もう、右京くんの話は終わり!!」
結衣にそう言いながら、ふと視線を道路の反対側に向ける。
ジュエリーショップの入り口。そこに見慣れた姿があって、思わず足が止まった。
「は?あれ右京じゃない?しかも、隣の女誰?」
先に結衣が口に出す。
「(…ちょっと、右京くん本気?)」
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。落ち着こうと必死に息を吸うのに、空気がうまく入ってこない。
「(あーそっか。なるほどね!彼女いたんだね!)」
頭の中でやけに明るい声が響く。納得したみたいに、全部が一気につながっていく感じがした。だから、私のこと避けてたんだ。好きでもない奴とキスしてしまって、なかったことにしたかったわけだ。
そう考えた瞬間、胸の奥がぎゅっと縮むのに、なぜか涙は出なかった。ただ、じわじわと熱だけが体の中に溜まっていく。
「……あー」
小さく声が漏れる。結衣が横で何か言っているけど、うまく聞こえない。
視界の中の右京くんは、スーツ姿のまま隣の女性と並んで、当たり前みたいに店の中へ入っていく。
「茉白、大丈夫?やっぱあんなやつやめようよ」
結衣が心配そうに私の顔を覗き込んでくるけど、違うよ、結衣。
「…はぁー、イライラする」
「え?」
「顔がかっこいいからってさ!顔面国宝だからってさ、私のこと弄んでいいわけじゃないよね!?そりゃ、顔以外だって完璧だよ!?仕事だってできるし、優しいし、顔はかっこいいし!それでもさあ!!」
自分でも止まらなくて、言いながらどんどん声が大きくなる。
ムカつく、ムカつく、ムカつく!しかもあんなお胸が大きそうな女!
もう右京くんのことなんて知らない!もし今後、謝ってきたとしも一生許さない!
もう、絶対!絶対絶対ぜーーーーーったい!忘れてやる!