彼と彼女の、最大の不具合



もう何もないから!好きじゃないから!彼女いるのにほかの人にキスしてくる男なんて願い下げだから!!

そう思うのに、ガブガブとビールを飲みながらも視線が追ってしまうのは右京くんだ。


「(…やってられないぜ)」


好きだなぁ、という気持ちとムカつく、という感情が交互にやってくる。どっちかに統一してくれればいいのに、心の中はまったく言うことを聞かない。もう、どうしようもない。

グラスを置く音が少しだけ大きく響く。周りの笑い声の中で、自分の呼吸だけがやけにうるさい。視線だけはまた勝手にそっちへ向いてしまう。女性社員に囲まれて笑っている右京くん。

すると、遠い距離のはずなのに、パチッと目が合った気がした。

一瞬、時間が止まる。


「(……え)」


心臓が変な音を立てて跳ねて、反射的に視線を逸らす。早すぎるくらいの動きで、わざとらしいほどに別の方向を見る。テーブルの上の皿とか、どうでもいい文字のポスターとか、目につくものを適当に追う。


「香坂さん?」


誰かに呼ばれた気がするけど、返事ができない。


「(見てた?今の見てた?いやいやいや、違うし)」


自分に言い訳を重ねるほど、逆に意識しているのがバレバレな気がしてくる。ビールをもう一口飲む。さっきより味がしない。


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