彼と彼女の、最大の不具合
「目が好き。くりくりしててかわいい。小さい唇だってかわいい。全体的に顔がいい。髪結んだ時のうなじがエロい。かわいい」
「……は?」
「小さいから白衣腕まくりしてんのも萌える。かわいい。歩き方、ぴょこぴょこしてんのもかわいい。声もかわいい。意外とハスキーなのがいい。喧嘩してるときだって、一生懸命口パクパクしてんのかわいい。笑った顔がかわいい。笑い声が響くとこもかわいい。たまに顔赤くして、恥ずかしがるところもたまんなくかわいい。全部、全部、かわいい」
右京くんが言い切ったあと、ふっと沈黙が落ちた。夜の街を走る車の音も、駅前を歩く人たちの話し声も、全部どこか遠くに聞こえる。
夜風が頬を撫でるたび、熱くなった顔が少しだけ冷える。でも心臓だけは全然落ち着かなくて、苦しいくらい速く鳴っていた。
「え、っと……?」
やっと絞り出した声は、自分でも驚くくらい震えていた。
だって今、右京くんの口からかわいいって言葉が何回も聞こえた気がしたから。
右京くんが、私を好き?そんなの、あるわけない。
「好きだよ、ずっと。俺は最初から茉白しか見ていない」
低くて優しい声が夜風に溶けた瞬間、胸がぎゅっと締め付けられた。ゆっくり顔を上げると、右京くんは今まで見たことないくらい柔らかい顔で笑っていた。
その視線は真っ直ぐ私だけを見ていて、甘くて、優しくて、苦しくなる。まるで本当に、私のことが好きでたまらないみたいな顔だった。
「(うそ……右京くんが私を……?)」
頭が追いつかない。
だって…………ずっと片想いだった。
「うそだ……」
震える声で呟くと、右京くんは少し困ったように眉を下げる。
「嘘じゃないよ」
その言い方が優しすぎて、余計につらくなる。期待したくないのに、期待してしまうから。