彼と彼女の、最大の不具合
会議が終わった瞬間、会議室の空気が一気に緩む。
さっきまでのピリつきが嘘みたいに、資料をまとめる音と椅子を引く音が混ざっていく。
「じゃあこの方向で一旦持ち帰りで」
「お疲れさまでしたー」
そんな声が飛び交う中、俺もノートを閉じた。
「……ふー」
思わず小さく息が漏れる。茉白はまだ資料を確認していて、最後まで気を抜かない顔のまま。
「右京くん、これ一応修正案まとめといて」
「はい」
軽く返しながら立ち上がる。周りがぞろぞろと出ていく中、茉白と俺も資料を抱えて会議室を出た。
廊下は少し冷えていて、窓の外には夕方の光が差し込んでいる。エレベーター前まで来たところで、ふたりきりになった。
「……ふぅ」
誰もいないのを確認した瞬間、茉白が小さく息を吐いた。その横顔を見て、なんとなく視線を逸らす。昨日のことが、また頭をよぎる。
「(ほんと、落ち着かない……)」
ピン、とエレベーターが到着する音。ドアが開く。
「どうぞ」
俺が軽く手を出すと、茉白は無言で乗り込む。続いて俺も入る。狭い箱の中。ドアが閉まった瞬間、外の音が完全に消えた。妙に静かだ。ふと、茉白の指先が資料をぎゅっと握り直すのが見えた。
「どうしよう」
「え?」
「私、顔に出てなかった!?」
「は?」
「いつも通りできてたかな!?大丈夫だった!?」
いや、むしろさっきのはいつも以上に容赦なかった気がするんだけど。どうしよう、バレてないかな、とか言いながら顔を両手で押さえて軽くパニクってる茉白に、思わず笑いが漏れた。
「はは、バレてたかもな」
「もー!なんでそんなこと言うの!?」
ムッとする顔がかわいい。少し、ハスキーなその声もかわいい。サイズが大きくて、白衣の袖をまくってるのもいい。ポニーテールで見えるうなじもいい。