彼と彼女の、最大の不具合
俺だって、商品に関しては絶対に妥協したくない部分がある。
だからこそ、噛み合わないまま終わることも多い。喧嘩はする。いや、むしろ喧嘩ばかりしている。
それでも不思議なことに、香坂とじゃなきゃ作れなかった商品がいくつもあるのも事実で、そのたびに思い知らされる。
肌科学や成分設計のスペシャリストだと周囲から言われている彼女の実力を、俺は誰よりも知っているし、心から尊敬している。
ぼんやりと、目の前で楽しそうに動く香坂の口元を眺めながら、そんなことを考えていると、手元に残っていたジョッキのビールを一気に流し込んだ瞬間、遅れてアルコールがぐっと回ってきた。
「(……パクパクしてんの、かわいい)」
付き合いたい。独り占めしたい。
香坂のことを狙ってる男が会社に山ほどいること、お前分かってるのかよと、心の中で問いかけながら、それでも一番隣にいたいのは俺だと思ってしまう。
彼氏になりたい。香坂の隣は、俺がいい。
「右京くん、私の話聞いてる?」
少しだけ不満げな声が飛んできて、「聞いてる聞いてる」と反射的に返しながら、思わず小さく笑ってしまった。