彼と彼女の、最大の不具合
② 関係の不具合
香坂茉白の場合
グローバル新製品プロジェクトのメンバーに自分の名前が載っているのを見つけたとき、本当は嬉しかったはずなのに、胸の奥に引っかかるものが残ったまま、素直に喜べなかった。
その理由は分かっている。
隣に並んでいた名前が、右京くんだったからだ。
同じタイミングで選ばれた意味を考えないほど鈍くはないし、周りがどう見るかも簡単に想像できる。
「今回、どっちが主導握るんだろうね」
そんな声が聞こえてきて、何も聞いていないふりをしながら、無意識に手に力が入る。
「次のリーダー候補ってこの二人でしょ。どっちか外れるんじゃない?」
冗談みたいに笑いながら話しているのも、ちゃんと聞こえている。別に競いたいわけじゃない。
右京くんと同じ方向を見て、いいものを作りたいだけなのに、どうしてこういう話になるんだろうと、小さく息を吐いた。
「香坂」
名前を呼ばれて振り向くと、そこにいるのは右京くんだった。
「(あ~…かっこいい、ストレス発散なる~癒し~)」
なんて心の中では軽く手を合わせて拝んでいるのに、実際の顔はいたって真顔を装うしかない。
「来週から試作が始まるから、そのつもりでよろしく」
淡々としたその声に、仕事モードのスイッチが一段階上がるのを感じる。
「はい」
短く返事をして、差し出された資料を受け取る。表紙には大きく『グローバル新製品プロジェクト』と印刷されている。
今回のプロジェクトは今までよりも規模が大きい。失敗は許されないし、関わる人も多い。だからこそ、余計に緊張する。
今回はあまり喧嘩しないといいけど…!