彼と彼女の、最大の不具合
「でも、ほんとにそう言ってられるのも今のうちかもよ?右京くんモテることは知ってるでしょ?うちの部署でも狙ってる子多いんだから」
「……うっ」
分かってる。分かってるけど、それを改めて言葉にされると……。
右京くんは、そういう人だ。入社当時からずっと、何かと騒がれていた。
仕事の成果ももちろんだけど、それ以上に目を引くのは、あの整いすぎた顔と、落ち着いた空気感で、気づけば女性社員たちが勝手に盛り上がっている。
アイドルかよって思うくらいの視線を、毎日浴びているのを知っている。
(絶対に私が一番好きなんですけど~!?)なんて心の中だけで強く反論するけれど、もちろん声には出せない。
彼女でもなんでもない立場で、そんなことを主張できるわけがないからだ。
だから私はいつも、見て見ぬふりをしている。見なかったことにして、聞こえなかったことにして、それでもちゃんと気づいてしまう自分だけが残る。
右京くんのことは、何があっても好きだと思う。たぶんよほどのことがない限り、嫌いになるなんてことは一生ない。でも同時に、もう一生右京くん以外の人を好きになることはないんじゃないか、とすら思っている自分もいる。
どれだけ頑張っても、どれだけ背伸びしても、追いつけない場所がある。好きになってほしいと思うのに、もし私と同じだけの気持ちを返されたら、きっとキャパオーバーで死んでしまう。
右京くんは、私のことをどう思ってるんだろう。
きっと、言うことを聞かない強情なワガママ女だとでも思われてるんだろうな。
そう思った瞬間、なんだか自分が少しだけ滑稽に思えて、乾いた笑いがこぼれた。
「ははは……」
「急にどうした?」
もっと素直になれたらいいのに。そう思うのに、素直になるほど怖くなるのはどうしてなんだろう。
好きだと思う気持ちと、それを伝えた先にあるものを想像してしまう気持ちが、いつも同時に押し寄せてくる。