彼と彼女の、最大の不具合



分割してから、現場の空気はむしろ悪い方向に静かになっていた。

右京くんと私はそれぞれ別のラインで試作を進めているはずなのに、どちらのチームからも決定打が出ない。

最初は「効率が上がるはず」だった分割運用が、気づけばただの停滞になっている。

データは増えているのに、完成には近づいていない。むしろ、どの数値を正解にすればいいのか分からないまま、みんなが手探りで同じ場所を回っているような状態だ。


「香坂さん、この配合どう思いますか?」


他の研究員に聞かれても、すぐに答えが出てこない。

以前なら、右京くんとぶつかりながらでも方向性を決められていたのに、今はその衝突する相手がいない。ただ自分の中だけで判断しなければならなくて、その判断に確信が持てない。


「右京さんのチームはどう進めてるんですか?」


そう聞かれても、「分からない」としか言えないのがもどかしい。分からないはずがないのに、分かる機会そのものがなくなっている。

会議でも、報告は別々。お互いの試作結果は資料で見るだけで、リアルタイムで意見をぶつけることがない。


ボーっとしながら、デスクの上に頬をくっつけてビーカーの中を見つめる。

頭はクリアにならないし、QA部の人からは「このペースだと評価スケジュール遅れますよ」と急かされるしで、余計に焦りだけが積み重なっていく。


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