彼と彼女の、最大の不具合



ビーカーの中でゆっくり揺れる試作品を見つめていると、その奥に、右京くんの姿が見えた。


「(……かっこいいなぁ)」


いつ見ても、どんなときも、どうしようが右京くんのかっこよさは変わらない。

最近めっきり喋る機会が減ってしまったせいで、私の心は勝手にどん底まで沈んでいる。

話したい。声が聞きたい。近くで顔が見たい。そんなことばかり考えてしまうのに、現実の右京くんは遠くて、簡単には届かない。

ビーカー越しに右京くんを見ていると、気づけば視界が滲んでいて、ぽたりと一滴、涙が頬を伝ってデスクに落ちる。


「……っ、仕事しよ」


小さく呟いて、慌てるように涙を拭うと、勢いをつけるように起き上がる。

ビーカーの中身を軽く揺らして、資料と照らし合わせる。
配合、粘度、安定性、どれも数値としては悪くないはずなのに…。


「(…右京くんなら、ここをどうするんだろう。もし今、隣にいたら)」


そう考えた瞬間、自分がどれだけ無意識に頼っていたかに気づいてしまう。

いつも、頼りすぎてるんだな。心のどこかで、右京くんなら私のやりたいことも分かってくれるって、勝手に思ってしまっていた。
でも本当は違うのかもしれない。

私は今まで、右京くんの言葉にちゃんと耳を傾けたことがあっただろうか。


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