彼と彼女の、最大の不具合
いやいやいや、でも……。
部長に「分割するか」と言われて了承したのは右京くんだし。しかも、あのとき、ほとんど間も置かずに即答で。
こんなこと言っておきながらも、本当は私のこと、邪魔だとか、足を引っ張ってるとか、思ってるんじゃないの……?
「香坂は、俺がいなくてもできる?」
不意に落ちてきたその一言に、思考が一瞬で止まった。
「(……か、かっわいい~!!!)」
なにその目!反則でしょ。さっきまで仕事の話をしていた人と同一人物とは思えないくらい、少しだけ不安を滲ませた、子犬みたいな目でこっちを見るなんて!
私が、右京くんいなくてもできるかって?そんなわけないでしょう!こっちは完全に行き詰まってるんですよ!
処方の方向性も、感触の落としどころも、全部迷子です!なのに、その顔はずるい!
初めて見る右京くんの表情が、ただただ可愛くて、可愛くて、可愛い。
「香坂?」
名前を呼ばれて、はっと現実に引き戻される。
「(……愛い)」
だめだ、語彙が死んでる。仕事で、しかもこんなふうに彼に必要とされることが、こんなにも嬉しいなんて思わなかった。
「……でも、右京くんが分割に了承したんでしょ?」
少しだけ意地悪かもしれない。でも、ここははっきりさせておきたかった。
だってもし、本当に邪魔だと思われていたら――今度こそ、きっと立ち直れないから!
ほんの少し唇を尖らせてそう言うと、右京くんは一瞬きょとんとしたあと、クスッと小さく笑った。その余裕のある表情に、心臓がまた変な音を立てる。
「(え~?かっこいいんですけど~?)」
遠くから見ているだけでも十分かっこよかったけど、こうして真正面で向き合う右京くんは、比べものにならないくらい破壊力がある。