彼と彼女の、最大の不具合



「いつも以上にヒートアップしたから、さすがに一回頭冷やそうと思ったんだよ。これ以上、QAに迷惑かけらんないし」


右京くんの言うことは最もだ。

品質保証部、いわゆるQAは、私たち研究開発が作り上げた処方を最後にジャッジする部署で、安全性、安定性、規格適合、すべてを厳しくチェックする砦みたいな存在だ。どれだけ感触がよくても、どれだけ革新的でも、品質がブレるものは絶対に通さない。

試作品の出来上がりが遅くて、そんなQAに「まだですか」「スケジュール守ってください」と小言を言われ続けている私たちには、正直、余裕なんてひとかけらもない。

評価試験は順番待ち、安定性データも積み上げに時間がかかるし、一回のズレがそのまま数週間のロスになる世界だ。


「…でも私、右京くんにいつも強く当たっちゃう」


ぽつりと本音が漏れる。
これでも一応、反省はしている。もうちょっと言い方があるだろって、自分でも思うし、周りからも散々言われてきた。でも、右京くんの仕事に対する熱量に向き合うと、どうしてもこっちも引けなくなってしまう。

中途半端なことを言ったら、全部見抜かれてしまう気がして。

すると右京くんは、少しだけ意外そうに目を細めてから、口元に手を当ててくすっと笑った。


「まあ、それは俺もだから。でも、それで今までいいもの作ってきたんだから、誰も文句言わないだろ?」

「(うぅ……すき~!)」


だめだ、また語彙が死ぬ。


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