彼と彼女の、最大の不具合



「スケールが変われば、流動も、熱の入り方も、全部変わる。今の処方じゃ、ロットごとにブレる」


わかってる。理解してる。頭では。でも、納得したくない自分がいる。


「……じゃあどうすればいいの」


少しだけ声が落ちる。意地と悔しさで、喉の奥がきゅっと締まる。


「その、どうすればを一緒に考えるんだろ」


間髪入れずに返ってきた言葉に、思わず息を呑む。


「香坂が譲れないなら、俺はそこをどう量産に落とすか考える」

「(……そうだ。この人は、こういう人だった)」


いつも、私がどれだけ突っかかっても、絶対にそれをおざなりにしない。私が大切にしてるものを大切にしてくれる人だ。私に足りないものを持ってる人だ。こういう人だからこそ、好きになったんだ。

右京くんだけに頼ってばかりじゃいけない。


「……じゃあさ、この感触、もう一回数値で分解する。で、どの要素が崩れてるのか、ちゃんと洗い出す」


口に出すと、不思議と頭の中が整理されていく。


「いいじゃん。俺もライン想定の条件でシミュレーション組み直す」


右京くんは一瞬だけ口角を上げて、それからすぐに資料へ視線を戻した。その何気ない仕草が、信頼されているみたいで嬉しくて、でも同時に背筋が伸びる。負けてられない。私もしっかりやらないと。

ピペットを持つ手に力を込めた、そのときだった。


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