彼と彼女の、最大の不具合



「何言ってるんですか、今忙しいのでそういうのやめてください」


右京くんはため息混じりにそう言って、呆れた顔で部長を見ている。


「(その顔もかっこいいけど~!)」


心の中で叫びながら、視線だけはどうしても逸らせない。

そっか。そうだよね。右京くんからしたら、そうだよね。

私は一瞬だけ、胸の奥がきゅっと縮むのを感じた。
でもそのときだった。


「忙しいのはわかってるけどな。お前ら、息ぴったりなのは事実だぞ」


その一言に、右京くんのペンがほんの一瞬だけ止まった。ほんの一瞬。ほんの数秒。そして、右京くんはゆっくりと部長のほうに視線を向けながら、みるみるうちに顔が赤くなっていく。


「…部長、まじでどっか行っててください」


いつもの冷静さが崩れた声に、逆にこっちの心臓が跳ねる。


「はははは、とにかく俺は期待してるぞ~!」


部長は楽しそうに笑いながら、QAこれ以上怒らせんなよ、と最後にそれだけ言い残して、ひらひらと手を振ってラボを出て行く。扉が閉まった瞬間、空気が一気に軽くなったようで、同時に妙な静けさが落ちた。

う、右京くんが顔を真っ赤にしている……。

じーっと見つめていると、私の視線に気づいた右京くんが片手で顔を隠した。


「なに?」

「……ううん、なにも」


あつい、と言いながら首元をパタパタと手で仰いでいる右京くん。私も、私で顔が熱い。さっきからずっと熱いままだ。

右京くん、なんでそんな顔するの?勘違いじゃない?少しは、私にも望みがあるって思ってもいい?こういうときだけ、ずるいよ。

言葉にできないまま、喉の奥に引っかかる。


「「「(お前ら早く付き合えよ…)」」」


周りの研究員たちが、資料を見たりモニターをいじったりしながらも、明らかに視線だけこちらに向けているなんてことは、知る由もなく。


< 41 / 140 >

この作品をシェア

pagetop