彼と彼女の、最大の不具合
ピリついた空気がラボに漂う。
周囲の同僚たちも、また始まったかという顔で遠巻きに様子を伺っているのがわかる。それでも引く気はない。だってこれは、私のプライドがかかっているから。
「……はぁ」
一瞬、沈黙が落ちる。そのあと、右京くんは小さく息を吐いてから、ふっと視線を緩めた。
「俺ももう一回考えるから、香坂も頼むよ」
そう言って、丸めた資料を軽く私の頭にポスッと当ててくる。
「…う、」
予想外の軽い衝撃に思わず変な声が漏れて、反射的に顔を上げると、そこにはさっきまでの険しい表情とは打って変わって、少し困ったように口の端を上げた右京くんの顔があった。
「な、頼むよ」
そんな風に、ほんの少しだけ優しさを滲ませた声で言われたら——さっきまでの怒りなんて、どこかへ吹き飛んでしまうじゃないか。
……なんて、表では絶対言えないけど。
「(うっ!顔がいい!かっこいい!ちょっと待って今頭ポスってされた!?え、距離近くない!?)」
心の中では完全にパニック状態。