彼と彼女の、最大の不具合



最初は可愛い子だなと思っていた香坂の仕事に対する熱意に、ただ純粋に応えてみたくなっただけだった。

あいつが真っ直ぐに向けてくる視線とか、一切の迷いなく言い切る言葉とか、そういう全部に触れるたびに、このまま流して終わらせるのはもったいないと感じて、香坂とだったらきっといい商品が作れると自然に思えた。


案の定、顔を合わせれば意見がぶつかって、気づけば毎回のように言い合いになっていたけれど、それでも不思議と嫌じゃなくて、むしろそのぶつかり合いの中でしか見えないものが確かにあって、その積み重ねの先にヒット商品を何個も作り上げてきたという実感が残っている。


互いに一歩も引かずにぶつかり合って、それでも最終的には同じ方向を見ているとわかる瞬間があって、その感覚が心地よくて、いつの間にかそれを当たり前のように求めるようになっていた。


そして、完成した時に商品を見つめる香坂のあの笑顔が、どうしても頭から離れなくなった。


普段はあれだけ強気で、一歩も引かないくせに、その瞬間だけは心の底から嬉しそうに笑うから、その無防備さにやられてしまって、それを何度でも見てみたいと思ったんだ。


最初は香坂に対する恋愛感情と仕事は別だと、自分の中で勝手に線を引いて、ただ仕事として向き合っていたはずなのに、気づけばその笑顔を見るためにまた一緒にやりたいと思うようになっていて、次も、その次もと理由をつけて関わり続けようとしている自分がいた。


その理由を深く考えないようにしてきたし、考えてしまえば何かが崩れる気がして目を逸らしてきた。


けれど、こうして言葉にしてしまえばもう誤魔化しようがなくて、どこからが仕事でどこからがそれ以外なのか、自分でも線引きができなくなっていることに、今さらながら気づかされる。


< 51 / 140 >

この作品をシェア

pagetop