彼と彼女の、最大の不具合
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ガラス張りのミーティングスペースに、試作品と資料だけが並んでいる。
空調の音だけが一定に響いていて、やけに静かだ。
香坂はサンプルを見下ろしたまま、指先で資料を軽く押さえている。その横顔は、集中してる時ほど頑固になる。
水瀬は向かいで腕を組みながら、すでに少し面白がっている顔をしていた。こいつが何を思っているのか大体想像つく。大方、俺の香坂に対する気持ちには気づいてるんだろうけど、やりづらいな。
昨日のことを思い出しそうになって、無意識に意識を切る。酔って間違えて香坂の最寄り駅にいたことなんて、絶対にこいつには知られたくない。
「で、これがQA通過ロットだね」
水瀬の言葉に俺と香坂は頷く。
「再現性は取れてる」
そのまま続けようとしたところで、香坂の声が被る。
「でも、ちょっと違う」
「何が?」
「このままだと、重く見える可能性ある」
「見えるだけだろ」
「見えるって、その時点で違うでしょ」
「市場の話なら、そこは切り分けるべきだ」
言った瞬間、香坂の顔が徐々に曇っていく。
「(あ……やばい)」
このままだと、いつものやつになる。香坂はこういう時、絶対に引かない。また喧嘩が始まると思ったけれど、そこでパチン!と手をたたく音が響いた。
「はいはい、痴話げんかしない」
「痴話げんかじゃないしっ!」
否定しようとした俺より先に、香坂が真っ赤な顔で即座に反応した。やりづれーと思いながら、ため息を吐いた。