彼と彼女の、最大の不具合
……それなのに。自分でも滑稽だと思う。
エレベーターの狭い空間で、耐えきれずに手を伸ばし、香坂の指先にそっと触れた。
「香坂にとって、俺ってなに?」
言ってから、自分でも何を聞いてるのか分からなくなるような問いだった。こんなことを聞いてどうするつもりだったんだろう。
「え?」
香坂の戸惑った声が返ってきて、その一音で後悔が押し寄せる。
「(……予防線はって、ダサい聞き方して、最悪だな)」
胸の中で自嘲するように思った瞬間、チーンという無機質な音が鳴ってエレベーターが1階に到着する。逃げるように視線を外し、「店、どこでもいいよな?」とだけ言って足を踏み出した。小さく返ってくる声にすら、もうちゃんと向き合えない。
香坂の顔が見れない。怖い。今どんな表情をしているのか、それを知るのが怖い。
外に出てそのまま近くの百貨店へ向かい、慣れた足取りで化粧品売り場へと進む。大手化粧品会社の中でも象徴的なスペース、『Lunaris Beauty Research』のコーナーには、研究開発部で手掛けた新しいスキンケアラインが整然と並んでいた。
一番目を引く位置にある化粧水のボトルを見つけて、自然と足が止まる。
「結構、売れてるね」
「まあ、これはほぼリニューアルみたいなものだからな」
「成功なんじゃない?結衣に聞いたら評判もいいみたいだし」
「ん」