彼と彼女の、最大の不具合



「会議でも、絶対一回は私の案否定するじゃん!なのにそのあと、さりげなくフォローして、結局通るようにするし!なにそれってずっと思ってた!距離近いくせに、急にそっけなくなるし!飲みに誘ったら来るくせに、楽しそうなのか分かんないし!」


一気にまくし立てられて、さすがに黙っていられなくなる。


「いや、なんで分かんねーんだよ!楽しくないやつと毎回ふたりきりで飲みにくるわけねーだろ!」


思わず声が強くなると、香坂もすぐに食い気味で返してくる。


「じゃあ、仕事でいつも口調強いのなにあれ!怖い!」

「人のこと言えねーだろ…」


ぼそっと返しながら、手元のビールをまたグビグビと飲み干す。アルコールが回ってきて、思考がじわじわと鈍くなっていくのに、感情だけがやけに鮮明になっていく。


「じゃあ、俺だって言うけどな?香坂だって、仕事のときと今とじゃ全然違うだろ!」

「だって、それは仕事だもん!」

「俺だってそうだわ!」


ほとんど同時に言い返して、妙な間が生まれる。なんで仕事でもないのに、こんなことで言い合いになってるんだ。意味が分からないまま、またビールに口をつける。喉を通る液体がやけに熱い。

……てかさっき俺、かなり重要なこと言った気がするんだけど、普通に流されてないか?


「右京くんはね、いつもいつも仏頂面のくせに、たまに笑うから心臓に悪いの!」


勢いのままに言い放たれた言葉に、一瞬だけ思考が止まる。
なんだよそれ、と言い返そうとして、でも口が開かない。怒ってるはずなのに、頬を赤くして、目を潤ませて、必死に言い返してくるその姿が——どうしようもなく可愛い。


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