彼と彼女の、最大の不具合



完全に酔いが回ってる。
頭はぼんやりしてるのに、言葉だけが勝手に溢れて止まらない。

気づけばまた言い合いになってるし、何について言い合ってたのかすら曖昧で、会話は噛み合ってないのに声だけはどんどん大きくなっていく。


俺は俺で、「いやほんとにかわいいからな?分かってんのか?」とか訳の分からない方向に熱弁してるし、香坂は香坂で「そういうとこがずるいって言ってるの!」って怒ってるし、完全に収拾がつかない。


アルコールが馬鹿みたいに回っていて、自分が今何をしているのかもよく分からない。

ただ一つだけ分かるのは、目の前で頬を赤くして怒ってる香坂から、どうしても目が離せないってことだけだった。


「……もういい」


ふいに、ぽつりと呟くみたいに声が落ちる。

自分でも何がもういいのか分からないまま、ぐっと身を乗り出して、そのまま香坂との距離を一気に詰めた。逃げ場なんて与えないみたいに、視線を絡めたまま、低く言葉を落とす。


「そんなに分かんねーなら、ちゃんと教えてやるよ」


酔ってるせいでブレーキなんてとっくに壊れてる。

どう思われるかなんて考える余裕もない。


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