彼と彼女の、最大の不具合
③ 誤作動の不具合
香坂茉白の場合
「今回の新規ライン開発、チーム決まったから確認して」
会議の最後に、部長からそう言われて受け取った資料に目を落とした瞬間、思わず息を止めた。
「(また!また右京くんと一緒だ~っ!)」
心の中で小さく、でも全力でガッツポーズをする。ここ最近、本当に一緒になることが多くて、そのたびにこうやって顔が緩んでしまう自分がいる。
…まあ、その分、毎日のように口論してるんですけれど。
前のグローバル新製品のとき、私と右京くんを別チームにしたらが逆に効率が落ちたので、部長が「今後もこの二人は同じほうがいい」と判断したらしい。それ以来、どれだけ言い合いをしても、ラボに大声が響いても、結局いつも隣にいるのは右京くんで——その事実に、内心ちょっとだけ救われている。
部長、ほんとにありがとうございます。
「今回は、LUMIÈRE LABとのコラボ商品になるから泊まり込みの出張になる予定だ。細かいところは資料に書いてあるから、ちゃんと確認しておけよー」
さらっと告げられたその一言に、今度は別の意味で思考が止まる。
「はい、解散」
パン、と軽く手を叩いて出ていく部長の背中を見送りながら、頭の中でその言葉がぐるぐる回る。
「(………出張…出張…出張!?右京くんとお泊り!?)」
いやいやいや、ちょっと待って私。落ち着いて、茉白。出張っていったって仕事だし、泊まり込みっていっても業務上の都合だし、別に二人きりで旅行に行くわけじゃないし!
そう、自分に言い聞かせるのに、心臓だけが全然言うことを聞いてくれない。どくどくと早鐘みたいに鳴っていて、変に意識してしまうのが余計に恥ずかしい。