彼と彼女の、最大の不具合
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新幹線を降りた瞬間、少しひんやりした空気が頬に触れた。大きな荷物を引きながら改札を抜けて、LUMIÈRE LABの最寄り駅に降り立つ。
何度か見慣れた景色のはずなのに、隣にいるのが右京くんだからか、不思議と変に落ち着かない。
「香坂、こっち」
少し前を歩いていた右京くんが振り返って手招きをして、小走りでその隣に並ぶ。
「ちゃんと資料読み込んできた?」
「一応ね。右京くんこそ」
負けじと返すと、「当然」って短く返ってくる。そのやり取りすら、なんだか少し懐かしくて、でも同時にどこか違う気もする。
「(距離、近くない…?)」
肩が触れそうで触れない、その微妙な距離に妙に意識が向いてしまって、落ち着かないまま歩き続ける。
「香坂さん!」
前から聞こえた明るい声に顔を上げると、誰かが手を振りながら駆け寄ってくる姿が見えた。
「久しぶりです」
そう言って人懐っこく笑うその顔に、一瞬で記憶がつながって目を見開く。
「山口!?」
「元気そうっすね」
そう言いながら笑うその姿は、昔と全然変わっていない。いや、むしろ背がさらに伸びていて、視界に収めるのに少し首を上げる必要があるくらいだ。
「なんで山口がいるの?」
しかも、しっかりスーツまで着ている。
「先輩。ちゃんと資料読んだんすか?ここに俺の名前あるじゃないっすか!」
呆れたようにため息をつきながら、山口は自分の資料を指さす。参加者名簿の欄を見ると、そこにははっきりと“山口隼人”の文字。