彼と彼女の、最大の不具合
「…山口、ルミエールにいたんだね」
「そうっすよ。相変わらずそういうとこ見てないですよね。商品資料じゃなくて、名簿もちゃんと見てください」
やれやれと肩をすくめるその仕草に、大学時代の空気が一気に蘇る。
一つ下の後輩で、同じ大学、同じ研究室、そしてなぜかよく同じチームになる人。いわゆる体育会系っぽい見た目なのに、意外と頭の回転が速くて、しかも変に諦めが悪い。私と同じように、理想だけはなかなか捨てられないタイプの人間だ。
「また一緒に研究できるなんて嬉しいです」
そう言って笑う山口は、昔のままで、少しだけ安心する。そのやり取りをしていると、ふと横から視線を感じて顔を向ける。右京くんが、無言のままこちらを見ていた。
「右京くん、こちら山口隼人。大学の時の後輩なの」
慌てて紹介すると、右京くんは軽く会釈をした。
「右京です。よろしくお願いします」
「こちらこそ!よろしくお願いします!今から、ラボまで案内しますね」
山口の明るい声が響く。その瞬間、右京くんの表情がほんの少しだけ曇った気がした。
「(……え?)」
一瞬だったから、気のせいかと思った。でも、胸の奥に小さな引っかかりが残る。歩き出した山口の背中を追いながら、私はコソッと右京くんに話しかけた。
「右京くん、体調悪い?」
「別に」
「…ならいいけど」
短い返事。それ以上は何も言わない。
やっぱり気のせいかな?
そう思おうとしても、どこか違和感は消えないままだった。