彼と彼女の、最大の不具合
ラボに到着してからは、設備の説明と今後のスケジュール確認で一気に時間が進んだ。
「じゃあ、今日は一旦解散にしますか。明日からよろしくお願いします。ふたりはホテルとってるんですよね?」
「(……ホテル)」
そうだ!ホテルだ!山口との再会で忘れてたけど、私…。
ちら、と隣を見ると、相変わらず何を考えているのかわからない顔の右京くんだ。
「(…右京くんと同じホテルなんだ…)」
出張なので当たり前だけれど、同じ部屋でもないのに緊張してしまう。
「そうだよ。ここの近くだったと思う」
なんとか平静を装って、山口にそう言う。
「じゃあ、そこまで送りますよ」
山口が軽く荷物を持ち上げながら先に歩き出す。その後ろ姿を追いながら、私たちは一歩遅れてついていく形になる。
「ここらへん、なんでもあるんで結構便利っすよ」
山口が周囲を見渡しながらそう言う。
「そうだねー」
なんて後ろから相槌を打ちながらも、意識は別のところにあった。というか、正確には隣だ。
「(右京くん、隣にいるだけでなんでこんなに気になるの…)」
歩くリズムも、呼吸のタイミングも、妙に意識してしまう自分がいる。こんなの、いつも通りのはずなのに。
「香坂さん、久しぶりに一緒でちょっと安心しました」
「え?」
「いや、昔みたいにガチで研究できるの、なんか懐かしくて」
山口はそういって、ちらと少しだけ振り向いて笑った。山口が大学時代のときもこうだった。誰とでも仲良くなれるタイプで、裏表のない性格のいい、いかにも後輩色が強いかわいいかわいい後輩だ。
「山口~。さては、私に会いたかったな?」
そう言うと、「相変わらずっすね」とクスクス笑っている。
そのやり取りの直後だった。