彼と彼女の、最大の不具合
指先に、ふっと何かが触れる。ビクッと肩が跳ねて、思わず勢いよく隣を見ると、右京くんが人差し指を口元に当てていた。
「(…しーって…なに!?)」
状況が追いつかないまま固まっていると、次の瞬間、スリ、と私の手に右京くんの手がゆっくりと重なるように滑り込んできた。
「……っ」
「もしよかったら、こっちにいる間飲みません?」
山口のその言葉に反射で、「…っ、うん、いいね!」と返す。でも、その声は完全に上の空だった。
頭では状況を理解しようとしているのに、意識はずっと指先に引っ張られている。右京くんの手が、離れない。それどころか、ゆっくりと確かめるみたいに、一本ずつ私の指先に触れてくる。
「(え、なにこれ、なにこれなにこれ…)」
次の瞬間、手のひらが完全に重なった。大きくて、硬くて、私の手とはまったく違う形。その温度がじわっと伝わってきて、変なところから心臓がうるさくなる。
「(……右京くん、なんで…?)」
さっきまで普通に仕事モードだったはずなのに、今だけやけに距離が近い。しかも、山口の前で。なのに右京くんは、何事もないみたいな顔で前を見ているだけで、むしろ私の動揺のほうが浮いている気がしてくる。
「じゃあ、それ楽しみにしてますね」
山口の声が遠くに聞こえる。その間も、手は離れない。