彼と彼女の、最大の不具合
ホテルに着くまでの道のり、右京くんはずっと私の手を握ったままだった。その体温がじわじわと伝わってくるたびに、頭の中は整理のつかないままぐちゃぐちゃにかき回されていく。
え、なにこれ、どういう状況?
さっきから何も説明ないまま、当然みたいな顔で手をつないでいるのも意味がわからないし、かといって振りほどくタイミングもなくて、ただ心臓だけがうるさいくらいに鳴っている。
右京くんはというと、そんな私の混乱なんて気づいているのかいないのか、いや多分気づいていてもあえて無視しているような、いつもの無表情を少しだけ崩しただけで前を歩いている。
どういうことなの!?
心の中で叫び続けているうちに、気づけばもうホテルの入口が見えていて、現実が一気に迫ってくる感じがした。
「じゃ、俺はこれで」
そう言って山口が軽く手を振りながら振り向いた、その瞬間だった。
右京くんはさりげなく、握っている私の手を自分の背中の後ろへと隠すように動かした。
「じゃあ、また明日よろしくお願いしますね」
右京くんは、完璧に作り込まれた仕事用の笑顔を山口に向けた。その表情は普段私が見ている無愛想な右京くんとも、さっきまで手を握っていた右京くんともまるで別人みたいで、思わず息をのむ。
「(……よろしくじゃないよっ!というか、どういうこと!?)」
心の中で全力でツッコミを入れながらも、私はとっさにあいている方の手で山口に向かって軽く手を振り、なんとか自然な笑顔を作ることに必死だった。自分でもぎこちないのがわかるのに、それでもその場をやり過ごすしかない。