彼と彼女の、最大の不具合
山口が角を曲がって完全に見えなくなった、その一瞬の静寂の中で、張りつめていた空気がふっと切れたかと思うと、右京くんは何事もなかったかのように、私の手をぱっと離した。
「(なっ…どういうこと!?)」
なんで山口がいなくなった今になって手を離すの!?
頭の中がぐるぐるして、思考が追いつかないまま私は右京くんを勢いよく睨みつけた。
「ちょっと右京くん?」
顔が熱い。絶対今真っ赤になってるのが自分でもわかるのに、それでも視線だけは外せなくて、必死に睨むしかできない。なのに当の本人はまるで悪びれる様子もなく、こちらを見返してくる。
「なに?離さないほうがよかった?」
「~~~っ!そんなこと言ってないでしょっ!山口の前でひどいよっ!」
声が少し裏返るくらい必死に抗議するけど、怒っているはずなのに胸の奥では全然別の感情が暴れていて、心臓が落ち着く気配なんて一向にない。
恥ずかしい。付き合っているわけでもないのに、なんでこんなことされてるのか意味がわからない。いや、そもそも手を握られる理由だって説明されていないのに、それなのに、離された瞬間のほうがずっと寂しく感じてしまった自分が一番わからない。
どうして、こんなにも嬉しくなっちゃうの。ほんとは離したくなかったなんて、そんなこと言えるわけないのに。