彼と彼女の、最大の不具合
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出張二日目。
昨日の出来事が頭の片隅にずっと残ったまま、ちゃんと眠れたのかどうかも曖昧なまま迎えた朝。それでもスケジュールは容赦なく進んでいく。
今日はLUMIÈRE LABで、コラボ商品の美容液サンプルを確認する日だ。
白く整えられた作業台の上に、整然と並べられた三つの小さなガラス容器。その透明な中身は一見どれも同じに見えるのに、よく目を凝らせばわずかに粘度が違うのが分かる。そのわずかが、商品として成立するかどうかを左右する。そう思うと、自然と指先に力が入った。
「3パターンご用意しています。しっとり寄りと、さっぱり寄り、それと中間です」
山口の説明を聞きながら、私は一つ目のボトルに手を伸ばす。
ポンプを押して、手の甲に一滴落とす。とろり、とした質感がゆっくりと広がる。見た目以上に粘度が高い。少し傾けただけでは流れず、皮膚の上に留まる感じ。そのまま指で伸ばす。
――重い。
頭で言語化するより先に、感覚が答えを出していた。
「……重い、ですね」
一拍遅れて言葉にすると、隣で同じように試していた右京くんも、無言のままわずかに眉を動かした。
「香りはかなりいいな」
低く落ち着いた声。そのまま鼻先に残る香りを確かめるように軽く指をこすり、「でも、確かに重い」と続ける。その一言で、空気がほんの少し張りつめる。
「どのあたりが重く感じますか?」
山口が冷静に問いかける。その視線が、私と右京くんの間を行き来する。
「油分が残る感じが…」
言いながら、もう一度指先でなぞる。なじんだはずなのに、皮膚の上に薄い膜が残っているような違和感。その”あと残り”が気になる。山口は小さく頷いた。
「エモリエントを少し強めに入れています。乾燥対策を優先した設計なので」
その説明は理にかなっている。でも同時に、簡単に引くつもりはないという意思も感じた。
「なるほど……」
そう呟いた直後、右京くんが視線を上げる。