彼と彼女の、最大の不具合
「ところで、お二人はいつもこんな感じなんですか?」
苦笑混じりの山口の問いに、「え…あぁ、まあ…すみません」としか言えない。「仲いいですね~」完全にフォローだ。それくらい分かる。でも、その言葉に一瞬だけ胸がざわつく自分がいるのも事実で。
「今回のコラボ、初めてなので何を一番大事にするか…また擦り合わせる必要がありそうですね。コンセプトなんでしたっけ?」
その問いに、私は一瞬言葉を詰まらせる。頭の中にはちゃんとあるはずなのに、さっきまでのやり取りと、昨日の記憶と、いろんなものが絡まってうまく出てこない。
「(ちゃんとしなきゃ…仕事なのに)」
ぎゅっと指先に力を込める。
「“触れた瞬間に満たされて、使い続けるほどに素肌が整っていく実感を与える美容液”——だったよね」
「“即時の満足感”と“継続による変化”、その両立が前提条件」
右京くんがそう続けるのを聞きながら、もう一度自分の手の甲に視線を落とす。さっき塗ったサンプルは、まだほんのわずかに膜感が残っている。
「だから、“重さで効いてる感じを出す”のは違うと思う」
静かに言い切ると、山口が少しだけ目を細めた。
「なるほど…体感の納得感と、機能の納得感を分けて考えるってことですね」
「うん。むしろ体感は邪魔しないほうがいい。スッと入って、“あ、いいかも”って思えるくらいの軽さの中で、ちゃんと後から効いてくる感じ」
言いながら、指先で肌をなぞる。もうほとんど何も残っていないはずなのに、さっきの違和感だけが妙に記憶に残っている。
「最初の一回で“好き”って思えないと、続かないから」