彼と彼女の、最大の不具合



そこまで言って、ふと視線を上げると、右京くんと目が合った。
ほんの一瞬だけ、何かを測るような視線。


「……確かに、それは一番大事だよな」


ぽつりと落とされた言葉。


「(なにそれ…ずるい)」

「じゃあ、“重さで満たす”んじゃなくて、“なじみで満たす”方向に設計振り直す感じですかね」


山口が、少し前のめりになりながら言う。


「油剤の種類を軽いものに置き換えて、揮発とのバランスを取りつつ、内部の保持力で勝負する、と」

「それなら、“触れた瞬間の満足感”も壊さない」


右京くんがすぐに補足する。
議論が、さっきまでのぶつかり合いから一気に前に進む。
噛み合った、という感覚。

その流れに、自然と息が整っていくのを感じながら、私は小さく息を吐いた。


「(……大丈夫、ちゃんと仕事できてる)」


さっきまでぐちゃぐちゃだった頭の中が、少しずつクリアになっていく。

——なのに。

その奥に、まだ残っているものがある。
昨日のこと。手の温度。あの距離。

そして、“見張っとかないと”なんていう意味不明な一言。


「(……ほんと、なんなの)」


心の中で小さく呟きながら、もう一度視線を手元に落とした。


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