彼と彼女の、最大の不具合
ふと、視線を上げると、右京くんと目が合った。一瞬だけ。でも、確かに。さっきまでの鋭さじゃない、少しだけ柔らかい目。
「……なに?」
「別に」
いつも通りのそっけない一言。そしてすぐに、何事もなかったみたいに視線を逸らされる。
……いや、今のなに?一瞬だけ見てきたくせに、なんでそんな何もなかった顔できるの?胸の奥で小さく文句を言いながらも、心臓はまったく言うことを聞いてくれない。
また、変なタイミングでドクンと大きく跳ねる。
「(ほんと、やめてほしいんだけど…)」
自分でも何に対して言ってるのか分からないまま、気持ちだけが落ち着かない。
「じゃあ次の試作、明後日には一度出せると思います」
山口の声に、はっと現実に引き戻される。
山口がタブレットを操作しながら、私と右京くんを顔を交互に見る。
「今日のフィードバック反映して、軽さ重視の方向で一パターン。あと比較用に現行に近いものをもう一つ」
「二軸で見るってことですか?」
右京くんが確認すると、「はい」と山口が頷く。
「そのほうが判断しやすいと思うので」
「いいと思います」
なんで今そんな普通に穏やかな感じなの?さっき私に対してはあんなにズバズバ言ってきたのに?その差に気づいた瞬間、じわじわと別の感情が込み上げてくる。
右京くんの、私とそれ以外の人との差が激しすぎだから!
「じゃあ今日はここまでにしましょうか」
山口がそう言って、軽く伸びをする。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまです」
私もそう返しながら、ふうっと息を吐いた。
——その瞬間だった。