彼と彼女の、最大の不具合
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それから数週間、ラボはこれまでにないくらい張り詰めた空気に包まれていた。
試作、評価、修正、再試作——その繰り返し。
私の処方と右京くんの設計は何度もぶつかって、そのたびに擦り合わせて、少しずつ形になっていった。
「香坂、このロット安定してる。昨日のより数値いい」
「ほんと?…あ、ほんとだ」
モニターに表示されたデータを覗き込む距離が、前より自然と近くなっていることに気づいて、少しだけ意識してしまう。でも今はそれどころじゃない。
「これなら、いけるかも」
小さく呟くと、右京くんも「そうだな」と短く答えた。無駄のない声。でも、その奥に少しだけ安堵が混じっているのがわかる。
そこからは一気だった。
最終処方の確定、スケールアップ試験、量産ラインでのテスト——どれも大きなトラブルはなく進んでいく。
「嘘でしょ…こんなにスムーズなの初めてなんだけど」
思わず笑うと、右京くんが肩をすくめた。
「最初に揉めたからな。潰せる問題はだいたい潰した」
確かに、あの言い合いがなかったらここまで来れてなかったかもしれない。悔しいけど、認めるしかない。