彼と彼女の、最大の不具合
「まあ、元気そうな香坂さん見れてよかったっすよ」
「心配されなくても私は元気!」
「大学のときみたいに研究一筋じゃなくてよかったってことっす」
山口は軽く笑いながらジョッキを持ち上げ、残りを一気に飲み干した。
「右京さん、めちゃくちゃ仕事できそうっすよね。今日だって」
「そう!右京くんが仕事できるのは本当にそうで、私がミスしたときなんかはね」
と話し始めたところで山口にストップ!と言われた。
「なんでよ?」
「香坂さん止まんなくなるんで」
「失礼な!」
そう言いつつも、右京くんのことを語りだしたら止まらなくなる自覚はある。
「でも、お似合いっすね」
「え?」
「香坂さんと右京さん、お似合いです」
「(……私と、右京くんが~っ!?)」
いいの?素直に喜んでおいていいの!?あんな王子様が私みたいな人間とお似合いだなんてほんとにいいの!?
「香坂さんが言い合いしてんの、初めて見たし、香坂さんのレベルについていく人にも初めて出会いました」
山口は少し笑いながら、でもどこか懐かしそうにそう言った。
「……そうかな?いつも喧嘩ばっかりだよ、ほんとに」
そう返しながらも、右京くんの顔が頭に浮かぶ。あの淡々とした目と、容赦ない指摘と、でも絶対に雑にしない仕事の姿勢。
「それがいいんじゃないすか?そうやって作ってくもんでしょ、いい商品って」
「……。」
グラスの縁を指でなぞりながら、うまく返せないまま視線を落とす。山口は少しだけ目を細めて続けた。