彼と彼女の、最大の不具合



「香坂さんと一緒にやってるとき、正直ついてくのに必死でした。できるだけ足引っ張らないようにって、毎回そればっかり考えてて。香坂さんが絶対的なデータを叩き出すから、意見なんて差し挟む余地もないくらい完成されてたじゃないですか。だから余計に、自分の存在が薄くなっていく感じがして、でもそれでも隣にいたくて、必死で食らいついてました。当時は、それが俺すごく悔しくて、情けなくて、何度も自分の無力さ思い知らされて。でも同時に、どうにかして認められたくて、ほんの少しでも役に立ちたくて、ずっと足掻いてたんです。……香坂さんも、きっとつまんなかったでしょ」


そう言われた瞬間、胸の奥を掴まれたみたいに息が止まりそうになって、私は反射的に首を振っていた。


「……そんなことない、全然そんなことないよ。私がこうしたほうがいいとか、ああしたほうがいいとか、思いつくままに言ったことを、ちゃんと受け止めて、形にしようとしてくれたのは山口だったじゃん。山口がいたから、それがちゃんと意味のあるものになっていったんだよ」


言葉にしながら、自分でも驚くくらい喉が詰まって、うまく息が吸えなくなる。
視界の奥がじんわりと滲んで、今さらになって気づく。山口から見た自分が、そんなふうに映っていたなんて、少しも知らなかったし、考えたこともなかった。


「……良かったです」


静かに、でもどこか安心したように山口がそう言って、ゆっくりと息を吐く。


「今は、香坂さんの隣に右京さんがいてくれて」


その一言が落ちた瞬間、心臓が大きく跳ねて、鼓動がうるさくなる。

顔を上げると、山口はいつもの、人懐っこくて少し照れたような笑顔を浮かべていて、その優しさが逆に胸に刺さって、何も言えなくなったまま、ただその表情を見つめることしかできなかった。


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