恋から逃げるのには理由(わけ)があって
「――向日葵!」

聞こえた声は、ありえないくらい近かった。

強い力で、体が横へ引かれた。
いや、引かれたのではない。
押しのけられた。

濡れた地面に足がもつれ、私は壁に肩をぶつけた。
バッグが落ちる。
スマホが滑る。
視界が揺れる。

その中で、白い光みたいに太陽が飛び込んできた。

黒いコート。
濡れた髪。
息を切らした顔。

彼が私と男の間に立った。

「やめろ!」

低い声が響いた。

男の腕が振り上がる。
刃が光る。

太陽が、私を背に庇った。

時間が、ゆっくりになった。
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