恋から逃げるのには理由(わけ)があって
怪しい。

いや、正確には怪しいのに顔の上半分だけで美しい。
目元だけで人類の平均値を押し上げてくるの、やめてほしい。しかもその横には、銀色の大きなスーツケースがあった。映画の撮影で海外へ二ヶ月行く人が持つやつだ。

「おはよう、向日葵」

声で確定した。

「……帰ってください」

「まだ何も言ってない」

「スーツケースが言っています」

太陽は、隣のスーツケースを一度見た。

「荷物を持ってきた」

「見ればわかります。なぜ」

「必要だから」

「何に」

「ここで暮らすのに」

私は無言でドアを閉めた。

「向日葵~」
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