恋から逃げるのには理由(わけ)があって
――マンションに戻ると、部屋は静かだった。

広いリビング。
整えられた家具。
白いキッチン。
向日葵が一度座ったソファの端。

ここに彼女がいた時間は、ほんの少しだけなのに、部屋のどこにもその気配が残っている気がした。

彼女が水をこぼしたテーブル。
雑炊を食べた場所。
風邪の俺に鮭かゆを作ってくれたキッチン。

俺はキャップとマスクを外し、ソファに座った。
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