恋から逃げるのには理由(わけ)があって
ドアを閉め、鍵とチェーンをかける。

「で」

私は腕を組んだ。

「説明してください。簡潔に。法律に触れない範囲で」

「向日葵と暮らそうと思って」

「触れました。私の精神の法律に触れました」

「嫌なら、無理には入らない」

「嫌です」

「そっか」

即答した私に、太陽は少しだけ目を伏せた。

その反応が、また困る。
強引に見えるのに、私が本当に拒否すると、ちゃんと立ち止まる。だったら最初からスーツケースを持ってこないでほしい。ブレーキはあるのに、なぜ発進がロケット級なのか。

「勝手に同棲を始めないでください」

「同棲というより、まずは同居」

「言葉を薄めても罪状は変わりません」

「一緒にいれば、話せると思った」

「話すために住まないでください。カフェがあります。公園があります。人類はそのために公共空間を発明しました」

「わかった。ここには住まない」

拍子抜けするくらい、あっさりした返事だった。

私は身構えていた肩の力を少しだけ抜いた。

「本当に?」

「向日葵が嫌なら、住まない」

「じゃあ、そのスーツケースは」

「別の場所に置く」

「別の場所?」

太陽は、何でもないことのように言った。

「近くのマンションを借りた」
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