恋から逃げるのには理由(わけ)があって
私はずっと、太陽の人生を自分の罪みたいに抱えていた。
私が生きてと言ったから。
私が結婚したから。
私が隣にいたから。

でも、太陽はそれを、罪じゃなくて命綱だと言った。

「それでも、怖いの」

私は正直に言った。

「好きだって認めたら、また同じ未来に近づく気がする。太陽くんの隣にいたいって思った瞬間に、あなたを失う未来が戻ってくる気がする」

「俺も怖い」

太陽は言った。

「さっき君から前の人生の話を聞いて、怖かった。自分が死ぬことより、君がそんなものを一人で抱えてたことが怖かった」

「……一人で抱えるしかなかった」

「うん。でも、これからは違う」

太陽の目が、まっすぐ私を捉える。

「俺は、君を守りたい。でも、君を閉じ込めたいわけじゃない。君の怖さをなかったことにして、俺の気持ちだけ押しつけたいわけでもない」

彼は一瞬、言葉を探すように視線を落とした。

それから、もう一度私を見た。

「俺は、君が笑うところが見たい」

胸が、熱くなる。

「コピー機に負けた話をしてる時も、プリンのカラメルで真剣になる時も、俺の行動力に怒ってる時も。向日葵が本当に笑うと、俺は生きててよかったって思う」

太陽の声が、少しだけ震えた。

「笑う君が好き。だから、俺の隣で笑っていてほしい」

その瞬間、世界の音が遠くなった。
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