恋から逃げるのには理由(わけ)があって
太陽は私の手を握ったまま、新庄を見た。

「明日、全部終わらせる」

「そのつもりです」

新庄さんはうなずいた。

「それから、風早さんの周辺にも接触しようとしていました」

体が固まった。

太陽の手に、少し力が入る。

「会社の近くで、風早さんを撮影していた人物がいます。橘の指示を受けた男です。まだ直接的な実害は出ていませんが、十分危険です」

もし、私が太陽に話していなかったら。
もし、あの路地で橘の顔に気づかなかったら。

また、同じことが起きていたかもしれない。

胃の奥が冷たくなる。
けれど今度は、ただ震えているだけではなかった。

「……止められるんですね」

私が言うと、新庄はきっぱりとうなずいた。

「止めます」

その一言は、派手ではなかった。
でも、どんな慰めより頼もしかった。
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