恋から逃げるのには理由(わけ)があって
本編の上映中、私は何度も息を止めた。

スクリーンの中の太陽は、国を守る王子だった。
馬で荒野を駆け、剣を抜き、傷ついた人の前に膝をつく。作りものの城も、衣装も、照明も、彼がそこに立つと不思議なくらい本物になる。

観客は笑い、息をのみ、最後の場面ではあちこちから鼻をすする音が聞こえた。

病室の白い天井の下で「王子様になれるかな」と聞いた男の子。
一度目の人生で、私を守って倒れた夫。
二度目の人生で、私が何度拒んでも生きて近くにいてくれた人。

その全部が、スクリーンの光の中で一人の俳優になっていた。

映画が終わり、エンドロールに「大空太陽」の名前が流れた時、会場は大きな拍手に包まれた。
私はその拍手の中で、こっそり左胸を押さえた。

この人が生きて、この作品を届けた。
それだけで、もう奇跡みたいだった。
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