恋から逃げるのには理由(わけ)があって
――入籍の日は、晴れていた。

役所の時間外窓口ではなかった。
今回はちゃんと昼間に行った。
平日の昼に有休を取り、太陽は変装し、新庄はなぜか周囲確認のために入口付近で待機していた。

「スパイ映画ですか」

「危機管理です」

「婚姻届の提出ですよね?」

「人生における最重要書類です」

否定できない。

婚姻届を提出したあと、私は役所の外で空を見上げた。

青い空。
白い雲。
隣には太陽。

一度目と同じようで、全部違う。

「風早向日葵じゃなくなった」

私がぽつりと言うと、太陽が私の手を握った。

「大空向日葵」

その響きに、顔が熱くなる。

「名前がますます天気予報みたい」

「晴れそうだな」

「たしかに、向日葵に大空と太陽は過剰演出ですね」

「俺は好き」

「でしょうね」

太陽は笑った。

その笑顔を見て、私は思った。

この人が生きている。
私の隣で笑っている。
それ以上の奇跡なんて、きっとない。
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