恋から逃げるのには理由(わけ)があって
「……」

「向日葵?」

「これは、その」

テーブルの上に、小さな湖ができていた。
高級マンションの高級そうなテーブルに、庶民の動揺が広がっている。

「手、濡れてない?」

太陽がすぐにタオルを取って近づいてきた。
近い。
条件の半径一メートルが、料理開始から早くも崩壊した。

「大丈夫です、自分で」

「グラス、割れてない?」

「割れてません」

「火傷は?」

「水です」

「でも」

「近いです!」

私は反射的に、彼の肩へ軽くチョップを落とした。

ぺしん。

太陽は目を丸くした。
それから、肩を押さえて小さく笑う。

「痛い」

「絶対痛くないでしょう」

「心が」

「近距離罪の罰です」

「逮捕される?」

「執行猶予つきです」

「優しい」

「前向きに受け取らないでください」

私がタオルでテーブルを拭くと、太陽は一歩下がった。
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