恋から逃げるのには理由(わけ)があって
私は雑炊を食べながら、視線を器に落とした。
見てはいけない。
見たら、思い出す。
食卓の向こうにいた太陽。
撮影で疲れているのに、私の分まで皿を洗ってくれた太陽。
眠そうにしながら「明日も生きような」と冗談みたいに言った太陽。
そして、その日常が突然終わったこと。
「向日葵?」
はっと顔を上げると、太陽がこちらを見ていた。
「また、泣きそうな顔してる」
「してません」
「うん。じゃあ、そういうことにする」
追及しない。
踏み込まない。
けれど、見逃してもいない。
そういうところまで、同じだ。
私はレンゲを置いた。
「今日だけですから」
「うん」
「あなたの部屋でご飯を食べるとか、手料理を食べるとか、そういうの」
「わかった」
「わかってない顔です」
「今日だけって言われたから、今日を大事にしてる」
太陽は静かに笑った。
「向日葵が食べてくれて、俺は嬉しい」
胸の奥に、やわらかくて重いものが落ちた。
好きだった。
一度目の私は、この人のこういうところが、どうしようもなく好きだった。
強くて、まぶしくて、遠い世界の人で、外では誰もが見上げる「太陽」なのに、家の中では驚くほど静かで優しい。
食べ終わると、太陽は余った雑炊を小さな保存容器に入れた。
「明日の朝、温めて」
「餌付け禁止です」
「食事」
「言い換えても罪状は変わりません」
「持って帰らないなら、俺が今夜食べる」
「……それはそれで困ります」
「じゃあ、持って帰って」
結局、私は受け取ってしまった。
容器はまだ少し温かかった。
見てはいけない。
見たら、思い出す。
食卓の向こうにいた太陽。
撮影で疲れているのに、私の分まで皿を洗ってくれた太陽。
眠そうにしながら「明日も生きような」と冗談みたいに言った太陽。
そして、その日常が突然終わったこと。
「向日葵?」
はっと顔を上げると、太陽がこちらを見ていた。
「また、泣きそうな顔してる」
「してません」
「うん。じゃあ、そういうことにする」
追及しない。
踏み込まない。
けれど、見逃してもいない。
そういうところまで、同じだ。
私はレンゲを置いた。
「今日だけですから」
「うん」
「あなたの部屋でご飯を食べるとか、手料理を食べるとか、そういうの」
「わかった」
「わかってない顔です」
「今日だけって言われたから、今日を大事にしてる」
太陽は静かに笑った。
「向日葵が食べてくれて、俺は嬉しい」
胸の奥に、やわらかくて重いものが落ちた。
好きだった。
一度目の私は、この人のこういうところが、どうしようもなく好きだった。
強くて、まぶしくて、遠い世界の人で、外では誰もが見上げる「太陽」なのに、家の中では驚くほど静かで優しい。
食べ終わると、太陽は余った雑炊を小さな保存容器に入れた。
「明日の朝、温めて」
「餌付け禁止です」
「食事」
「言い換えても罪状は変わりません」
「持って帰らないなら、俺が今夜食べる」
「……それはそれで困ります」
「じゃあ、持って帰って」
結局、私は受け取ってしまった。
容器はまだ少し温かかった。