恋から逃げるのには理由(わけ)があって

第5話 アップデートできない男

結局、その夜の私は、保存容器を冷蔵庫に入れるだけで十五分かかった。

太陽が作った卵雑炊。
しょうがの匂い。
「ちゃんと食べて。生きて」と言った声。

冷蔵庫の扉を閉めた瞬間、私は家電に向かって頭を下げた。

「封印、よろしくお願いします」

――翌朝、私はその封印をあっさり解いた。

負けた。空腹に負けた。
そして、温めた雑炊は腹立たしいほどおいしかった。

やめてほしい。私の体はもう少し私に忠実であってほしい。敵からの支給品で回復しないで。

食べ終わった容器を洗いながら、私は決意した。

すぐ返そう。
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